表紙インタビュー
家具・家電ベンチャー「UPQ(アップ・キュー)」
代表取締役CEO
中澤 優子
さん(100回)
―― 中学時代から「ケータ
イ」が好きだったとか。
「中1の時、越境で 電車通
学していたこともあり、連
絡用にケータイを持った。
中2でiモードが出てメー
ルが出来るようになり、高
校では写メール。ケータイ
を20 台は買い換えました」
―― 大学時代は携帯の販売
店でアルバイト?
「1年から3年までずっと。
ユーザーとして 10 年間使っ
た経験に販売店での経験を
プラスしました」
――
カシオ計算機に入社し
たのも携帯に関わりたかっ
たからですか?
「自分が欲しいと思う携帯
を作りたかった。当時、携
帯メーカーは10 社あったが
携帯の事業部に行けると言っ
てくれたのはカシオだけだっ
た。 家電営業で 5年修業
して目が出たら携帯の部門
に行けるという会社もあっ
たが、せっかくユーザーと
しての経験を蓄積し販売員
目線での経験も得だのに、
5年も経過したら私も会社
の中の人になってしまい、
鮮度が落ちてしまうと思い
ました」
――
茶で受けたって本当
ですか?
「最初は黒い髪、リクルー
トスーツで就活したが、携
帯の部署に行かせてくれる
会社はどこもなくて、元の
茶髪に戻した後、カシオの
最終面接に呼ばれました。
ケータイを作りたいという
思いを訴えたら、『中澤さ
ん、来る?』つて言われた。
入社後わかったことですが、
新規キャリア向けの部署を
立ち上げており、採用して
もらえたのでした」
――
2007年、入社後す
ぐ携帯の部署に?
「営業部入社でしたが、半
年後、企画部に異動し、念
願の商品企画開発に取り組
んだ。メンバーで女性は1
人だけでした」
――
特筆される開発は何で
すか?
「携帯のカメラで人物を美
しく撮影出来る『美撮り』
モードです。透明感のある
肌と目元の印象度をアップ
するのが売りで、プリクラ
世代だから生まれたアイデ
アだったと思います」
――
カシオを5年で退社し
たわけは?
「リーマンーショックの後、
米アップルのiPhone に負
けて業績が
悪化し、通
信事業撤退
により退社
しました」
――
その後、フリーランス
の商品企画コンサルタント
に?
「その頃FI層(20 〜34 歳
の女性)に受ける商品を考
えられるマーケター(マー
ケティング戦略立案者)が
すごく重宝されていた。女
性売り上げを伸ばしたいの
でコンサルしてほしいみた
いな注文が来ました」
――
2013年、秋葉原に
カフェ「PREGO(プレ
ゴ)」を開業しましたが、
店名はどんな意味ですか?
「イタリア語で『ありがと
う』とか『どうも』という
意味ですが、pregnant
(妊娠している)の意味で、
産みの苦しみを知り、モノ
づくりを生み出す場所にし
たい思いも込めました」
――
なぜカフェだったので
すか?
「退職金とコンサルで稼い
だお金で何か出来るか考え
た。飲食店で経営を経験し
てみようと思いました」
――
パンケーキが人気に?
「パンケーキが開店から3
か月後に情報誌『東京ウォー
カー』に載って行列が出来
た。注文を受けて1個I個
作るオーダーメイドケーキ
も評判です」
――
その後の展開は?
「カフェ近くのアーツ千代
田3331という廃校を利
用した施設で開かれたau
未来研究所の ハッカソン
(電子工作イベント)に誘
われ、商品企画者として参
加。『スマホの次の食に関
する新商品』がテーマだっ
たので、弁当箱『X Be
n(エックス・ペン)』を
出した。この弁当箱が経産
省のフロンティアメイカー
ズ育成事業に選ぱれ、米テ
キサス州オースティンのS
XSW(サウス・バイ・サ
ウスウェスト)にも出品さ
れました」
――
この育成事業が起業の
きっかけに?
「DMM.make AKIBA
とい
うモノづくりのためのコワ
ーキングス ペース ( Co
working Space = 共同の
仕事場)が14 年11 月に開設
されたので、翌15 年4月に
この施設での活動をスター
トし、7月に資本金100
万円でUPQを設立しまし
た」
――
モノづくりが中澤さん
の原点ということですね。
「モノづくりの楽しさをカ
シオ時代の5年間で教えて
もらった。
DMM.make A
KIBA
が アマゾンや 楽天み
たいなEC(電子商取引)
サイトを8月に始めると聞
き、それに合わせて24 アイ
テムの商品を発表。今は60
アイテムまで増えています」
――
どんな商品ですか?
「折りたためる電動バイク、
長時間の音楽・映像鑑賞に
適した大型チェア、ガラス
製のキーボード、初心者で
も食卓で手軽に燻製を楽し
める卓上フードスモーカー
など多種多様。商品を企画
し、仕様書を書き、量産設
計をして海外の工場に発注。
出来上がった商品を輸入し
て販売します」
――
海外は主にどこ?
「最初は中国や韓国に発注
していたが、米トランプ政
権が中韓を問題視し始めた
時点でフィリピンやベトナ
ムに変更した。おかげで、
新型コロナウイルスで中国
へ渡航出来ずモノづくりが
進まない、ということはあ
りませんでした」
――
商品はどこで買えます
か?
「直販か家電量販店、百貨
店の店頭で。家電量販店の
どのフロアにもUPQの商
品が並ぶようにカテゴリー
分けをして商品展開をして
います」
――
年商はどのくらい?
「一番多かった時は15 億円
ぐらい。電動バイクが爆発
的に売れて」
――
社員は何人?
「私1人だけ。他に庶務担
当やデザイナーなど業務委
託の方がいます」
――
仕事は楽しいですか?
「ようやく待っていたモノ
づくりの時代がやって来た
感じです」
――
これからの目標は?
「2017年以降は商品企
画力やプロダクトマネジメ
ントカ、製造ネットワーク
を活かし、企業の幅広い量
産製品の企画開発のコンサ
ルティング業務が中心になっ
ています。今年から
DMM.
make A
KIBA IoT 人材
育成の講師として、後発の
ペンチャーや大手の新規事
業のサポート体制を強化し
ています」
――
両国高校の思い出です
が、部活は何を?
「バスケットボール部で、
2〜3年ではキャプテンに。
体育祭の応援団を3年続け、
3年では黄軍副団長を務め
る等活発な高校時代でした」
――
記憶に残る先生は?
「体育の田原(正之)先生
とか数学の飴ちゃん、飴田
(孝儀)先生です」
――
両国高で学んで良かっ
たですか?
「友人に恵まれました。見
かけは派手目でも、努力家
が多く、皆まじめでしっか
りしています。卒業しても
なお続く友達との付き合い
が宝です」
――
後輩に一言。
「学生のうちは頭を柔らか
く、いろんなものにチャレ
ンジしたら良いと思う。楽
しく勉強してほしい」
(3月3日、千代田区の
富士ソフト秋葉原ビル
階 DMM.make AKIBAで)
(宇田川)
◇ ◇ ◇
なかざわ・ゆうこ 19
84年12 月、葛飾区生まれ、
35 歳。株式会社UPQ代表
取締役CEO。
・中央区立泰明小、銀座中
を経て2000年、両国高
校に入学し、03 年卒業した。
・07年3月、中央大学経済
学部を卒業。同年4月、カ
シオ計算機株式会社に入社
し、携帯電話・スマートフォ
ンの商品企画開発に従事。
・12 年3月、カシオ計算機
退社と同時にフリーランス
の商品企画コンサルタント
として活動。13 年4月、秋
葉原に カフェ「PREGO」
開業(現在は代々木に店舗
移転)。
・15 年7月、家具・家電ベ
ンチャー「UPQ」を設立。
20
年 3月、
DMM.make A
KIBA IoT 人材研修講師に
就任。