この書は、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎 師範(万延元年〜昭和十二年)
 の揮毫によるものである。
 昭和十二年本校の前身東京府立第三中学校の武道館が新築され、その記念と
 して当時の本校柔道教師・稲村五十次氏(講道館六段)が師の嘉納治五郎先生
 に、とくにお願いして書いていただいたものである。その際、先生は「精力善
 用」という 柔道修行の目的 を、二幅書かれたが、その一幅が新武道場に掲げ
 られ、他の一幅は愛弟子の稲村氏に贈られた。武道館に掲げられていた書は、
 昭和二十年の東京大空襲で焼失した。
  このたび稲村五十次氏の御子息・稲村訓昌氏は本校四十三回卒業生であり、
  この事情を考慮して、家宝であり、今は亡き父の形見でもあるこの書額を、
  母校を愛するご厚意から、改めて寄贈して下さったのである。
   なお、帰一齋は嘉納治五郎先生の晩年の雅号である。
平成三年六月